ストレリチアの切り花農家でなくても、花を切って使うことはあるのですから心得ておいて欲しいものです。「切り前」とは、その花の開花途中のどこで切るのが最上かを指します。困ったことに、これが花の種類によって異なり、みな、同じではないのです。
道の駅の花摘み園を手伝っていた頃です。私の留守中にお客さんが切ったストレリチアは、たいてい早切りで、未だ開花していない蕾の状態が多くて困りました。早めに切れば、それだけ長持ちするとの思い込みなのです。花も色々で、ランやストレリチアのように長持ちする花は、十分に養分を吸い上げさせて弁を固まらせてから切らなくてはならないのです。それを途中で、或いは、まだ、始まっていないのに切られてしまったら、後になって困るのに決まっています。困るどころかストレリチアを早切りすると、咲かないで終わってしまうことすら起きるのです。
季節によっても手心を加えるのがプロというものでしょう。秋、春の暖かい季節は2輪目が早く出てくるので早めがよく、1輪開花でもよいくらいですが、寒い冬は遅れます。十分、つまり、2輪でてから切るのは常道です。
花の長さも問題です。花摘みのお客さんは相当な割合で、初めから使う必要な長さつまり、短く切って持ち歩きます。実は花の茎は養分の貯蔵庫ですから、持ち歩く期間の消耗に役立ってくれるのに、短く切られてしまったのでは、その時から消耗が始まってしまいます。また、切り口に水を含ませたがる人も多くいます。これも間違いです。花は仮死状態で運ぶ方が痛みが少ないのです。これらは生け花のお師匠さんから指導を受けた人は問題ありませんが、一般の人の中には多くいます。
花を扱うのは遊びでするのだから「私の流儀でいいんだ」という人もいるでしょう。でも、花の扱いに、その人の素養が表れてしまうことも確かです。社会生活も楽ではないですね。