ストレリチア秘話No.287 ストレリチア 世界の現状

ストレリチアは現在では、ほぼ世界中ともいえるほど広まっていますが、それでも、お国ぶりによって、扱い方も様々なようです。まず、原産国の南アフリカですが、自生地を控えているだけに数に困ることは無く、どこへ行っても、お目にかかれるほど一般的なのですが、 意外に水準は高いとはいえません。それは、有余るほどあったので、それを分別、 選別するだけで精一杯の時代が長く、 人工的な改良などは考えもしない風潮でした。 現在でもこの傾向は残っていますが、 今後、どうなることでしょうか。変りものを探そうにも、そろそろ、底が見えてきたでしょうから。

 アフリカの他の諸国は、環境条件は悪くはないのですが、政治上からも、国民の経済事情からも、ストレリチアに目を向ける余裕はなさそうです。

 地中海沿岸もストレリチアの栽培は可能でしょうが、どうも民族の好みが、この花に遠いように思われます。

イギリス、北ヨーロッパの人々は、この花が好きで需要はあるのですが、如何せん、気候が寒く、自国での栽培は困難なので輸入に頼るのですが、ストレリチアの切り花は、かさばって重く、輸送経費の点が障害となっています。

 北アメリカでは、西海岸が中心で多いのですが、 他の地域では少なく、切り花の需要も中間層からで多くはないようです。

  南アメリカは栽培には適していても、需要が少なく、盛り上がりに欠けています。 私の偏見では、ラテン系の国の人々は、丸くて派手な花は大好きでも、直線で鋭い感じのストレリチアには気が乗らないのではないでしょうか。これはインドから中近東へかけての国々も同様です。

 東南アジアを始め、熱帯地域では暑すぎてストレリチアには迷惑。しかも、植物の生育が旺盛ですから、すぐに覆われてしまいます。

 オセアニア地域は、気候が南アフリカに似ていて栽培は楽なのですが、 地元での消費が少ないので、 輸出に頼ろうとしても、ストレリチアは、なかなか厄介です。この点、中国の沿海部も同じ条件ですが、こちらは、まだ始動はみられません。 輸出だけに頼るのはストレリチアの本来の姿ではないと思っています。

 最後は日本。こここそがストレリチア天国ではないでしょうか。しかし、我が国はストレリチア栽培の理想的条件を備えているわけではありません。やる気がないのであれば拒絶できます。 だが、意欲に燃える人にとっては、障害は越えられるものなのです。日本海側の雪の中でも切り花栽培は行われ、鉢植えなら北街道でも珍しいことではありません。

 戦国時代にキリスト教の布教にやってきたバテレン僧が驚いた調子で書き記しています。

「日本人は、どんな貧しい庶民でも、花を愛でている」

と。 ヨーロッパでは貴族階級でしか見られない現象だからなのです。 この心情は平和が続いた江戸時代に、 さらに磨きをかけられたわけですから、 現代の私たちが受け継いでストレリチアにのめり込むのは当然、 といってもよいでしょう。 現在の我が国のストレリチアは、質、量ともに世界のトップレベルにあります。 これは今後も続くことでしょう。 何しろ、国民性、そのものがストレリチアとの相性にぴったりだからです。