ストレリチア秘話No.329 ストレリチア愛好家の最高レヴェルに?

 ストレリチアの栽培では、「ストレリチアが望んでいるから」と、その条件を満足させてやれれば、立派に育ち、栽培家は一人前といえるでしょう。でも、まだ、奥があるのです。

 それは、「なぜ、ストレリチアは、そんなことを望むようになったのだろう?」と、条件の背景まで知ろうとすることです。これは直接の技術ではありません。技術の裏付けともいうべき事柄で、厚みを加えることになる、といってもよいでしょう。

 ストレリチアが乾燥に耐えるよう進化してきたことは今まで、散々、述べてきましたので、今回は大型種のアルバについて語ることにします。アルバを栽培することはないでしょうが、この章の目的には参考になると思います。

 ニコライの自生地イーストロンドンから約 200km西のチチカマ森林の海岸沿いにアルバが自生しています。ひとかたまり、ともいえる一角だけで、他に散在はしていません。

 私の想像では、東のイーストロンドン辺りから移住してきて進化したものと思われます。

 ニコライにそっくり、そのままでいられなかったのは、環境が違っていたからでしょう。雨が多く、他の木も楽に育つ環境だったのです。ここで生きるには、今までより背が高くなければなりません。それに叢生するだけの余裕もありません。結局、ひょろりと伸び上がった姿で孤立のような生き方になったわけです。

 ところが周りの木々より高くなって生きやすくなったものの、強風にさらされることになってしまったのです。現在のアルバ自生地は、海岸沿いの丘の海側の斜面ではなく、海からの風を除けた内陸向きの斜面です。ドライブ休憩の展望台から見渡すと、風を除けた斜面にアルバが群生しています。それでも頂上に近い所では、風で折られたアルバを数本見かけました。どうも、この斜面は日当たりがよくなさそうなのです。結局、アルバは、日当たりよりも身を守ることを優先したようです。自生が、この狭い地域にとどまったのは、適地がこれ以上はなかったからではないでしょうか。

 ストレリチアの形質は、生まれ、進化した時に、望むと望まざるとに拘わらず、否応なく身につけさせられたものでしょう。これを知って栽培に望めば完璧といえるのではないでしょうか。