ストレリチア秘話No.398 施肥 人の望みとストレリチアの望みの食い違い

 またまた、やってしまいました。ストレリチア実生2年苗の新芽が黒変してしまったのです。ストレリチアの幼苗は過度の肥料には弱く、直ぐに障害を起こしてしまいます。このことは分かっていながら、性懲りもなく、また、やってしまったのです。理屈では分かっていながら、こんな失敗を繰り返してしまうのは、施肥量の限界が分かっていないからだ、としかいえません。

私のところでは一般に行われている量よりは少なめの施肥をしているつもりです。それなのに、こんな失敗が起きるのです。ストレリチアの成株は、有機質肥料の場合は、多すぎても障害は現われませんので、どこが限界なのか、なかなか分かりません。反対に、少ないからとて、成育に影響が表われるほど敏感ではないのです。

 ところが幼苗だけは特別で、肥料が多すぎると、てきめんに障害が出てしまいます。これが分かっているからこそ、今年は少なめにしたのですが、やっぱり、黒変が出てしまいました。まだ、多かった、ということです。

 こういう事が起きるのは、少しでも早く大きく育てたいという人の側の欲望がストレリチアの都合を上回ってしまったからです。ただ、この黒変の場合は、症状が軽ければ、次の新芽は無事に育ちますから大事に至るわけではありません。

 人の欲望とストレリチアの都合が食い違ってしまう例は数多くあります。切り花栽培のハウスをのぞくと、肥料のやり過ぎの場面に出会うことが少なくありません。栽培家にすれば、肥料を多くやれば、花が多く出ることを期待しているのです。ところがストレリチアにしてみると、肥料と花立ちの相関は小さく、結果として、余った肥料は株の成長に回されてしまいます。緑ゆたかに繁っていても、花は少しも多くないのです。お互いの望みが食い違っているといってよいでしょう。