ストレリチア秘話No.401 「秘話」 裏ばなし

この「ストレリチア秘話」も400回を超えました。ここで改めて振り返ってみたいと思います。

 まず、お伝えしたいのは、最初は、こんなに多くの内容があるとは思っていなかった、ということです。せいぜい 100話も書ければ十分と思って始めました。書き出してみますと、最初の頃は調子よく、次々と案が出てきて書くことが出来ました。ところが、だんだんとペースが落ちてきて、200話を越えた辺りから、そう、簡単にはアイデアが浮かばなくなってきたのです。

 「ウン、ウン」とうなりながら、ストレリチアのあらゆる場面を思い浮かべながら、ようやく一つのテーマを思い出し、書き上げても、300話を越えるようになってからは、何日かけても、何一つ、思い浮ばなくようになってしまいました。もう、こうなると残り少なくなった在庫を絞り出すようにして、ようやく、一つを仕上げる状態です。こんな有様ですから、次の500号までは到達出来るか、どうかは、もう、自信はありません。

 ここで打ち明けますが、「秘話」は毎週、更新してはいるものの、その都度、書いているのではありません。前もって書きためてあるものを載せているのです。これは私の性分で、余裕をもっての仕事が向いていて、時間に追われてすることが出来ないからなのです。

 それでも、この「秘話」を書いておいてよかった、と思う出来事がありました。

 「ストレリチアの本格的な勉強をしたいので講義してください」

 といわれ、私は困ってしまったのです。今まで自分が身につけてきたストレリチアについての知識は楽に伝えられる、と思っていたのに、いざ、やろうとすると、何から始めて、何をすればよいのか見当がつかないのです。それでも、今まで私はストレリチアの専門書や雑誌の記事は書いてきましたから、それなりの資料はあります。でも、「本格的」といわれると、「それよりは、もっと深く、それ以上に!」ということなのです。期待に応えるだけの内容は持っているはずです。ところが、その知識を取り出そうとしても、直ぐには出てきてくれないのです。例えてみれば、倉庫に品物は、いっぱい詰ってはいるものの、それらが皆、梱包されていて、何が、どこに保管されているかは一目ではわからないのに似ています。そうなると、一日は外部にさらしてみることと、品物一覧のインデックスが必要になります。それで、この「秘話」が役立ってくれ始めたのです。

 「ストレリチア秘話を読みなさい。そこから始まります。」これが最初の私の解答です。なぜなら、「秘話」は、今までの資料や記事よりも一歩進んだ内容だからなのです。それでも、打ち明けますと、私自身でさえも、まだ、「何か残っている、まだ奥がある」気がしてなりません。この解明には、まだまだ先がある、と思っています。

解答の第二は「秘話」の運用です。それには、昔ながらの技芸の師匠と内弟子の関係が大いに役立つのではないかと思っています。師匠は、内弟子には手を取って教えたりはしません。教える、数えられるのレベルを超えた段階なのです。師匠にしてみても、直接には教えられないのです。どう教えたら良いか分からない、また、自分も磨かなければならないハイレベルの状況でのことなのですから、阿吽の呼吸で進むしかありません。弟子は師匠の生活から言葉のはしはしに至るまでの中で、にじみ出るものを感じとるしか方法はありません。時には質問してまでして師匠から教えを引きださなければなりません。ここが表の場で、技術だけの付き合いの通いの弟子とは違うところなのです。AIの支配が強まる現代では、意外と、この違いが大きな意味をもってくるかもしれません。ここがAIの一番、苦手とする分野ですから。通り一遍の仕事がAIに奪われてゆく時代の中で、人類に残された最後の分野になるのではと思われます。