ストレリチア秘話No.435 ストレリチアと風

私の住んでいる南房総の海岸地帯は冬の季節風、西の風は名物とも呼べるほどで、ほとんど毎日のように風速15m、時には20mの台風に近いような、ひどい風が吹きまくります。時にはビニールハウスなどの施設に被害が出るほどのこともありますが、露地植えのストレリチアには何の被害も起きません。ストレリチアは強風に強いのです。猛烈な台風でさえも大したことはありません。

 前のNo.432,No.433でストレリチアは硬く、締まった体に育てるのが理想、と述べましたが、それには、もう一つ、「ストレリチアは強い風にあてなければならない」ことを加えなければならなかったのです。換気不十分のハウスで育てられたストレリチアは、ヒョロヒョロな姿になりがちです。強い風に当たった経験がないために、その対策が出来ていないのです。これには天窓だけでなく、横窓も十分開いて風を取りこむ必要があります。

温帯や熱帯の降雨林の植物は、水分の補給が十分にありますから、葉の気孔は、無防備ともいえるほど開口しています。それに引き換え、ストレリチアのような乾燥地帯の植物は十分な降雨が期待出来ないので、水分が無駄に逃げないよう、開口部を小さく締めて身を守っているのです。しかし、そんな構造では、無風状態のときは空気の出入りが不十分になってしまいます。二酸化炭素を吸って酸素を吐き出すガス交換は植物にとって最も大切な作業です。そこで空気が動いてくれる、つまり、風が吹いてくれれば楽に出来ます。風が必要なのです。ただし、風は望む通りだけに吹いてくれるわけではありません。時には、なぎ倒されそうな強風だって襲ってきます。そうなると大変です。気孔を閉じるぐらいではすみません。そのために、風に耐えられるだけの強度を持った体にしておく必要があるのです。

 このようなわけで、ガッチリしたストレリチアが育ってくるのです。いくら南房総でも、休みなく風が吹きまくっているわけではありません。小春日和の穏やかな好天の日も巡ってきます。その陽気に不似合いなほど、ガッチリ育ったストレリチアに対面する、ちょっと贅沢な、いや、ちぐはぐ、といえばよいか、の場面も楽しみなものです。