これは、もう新しい話ではありません。20年も前、南アフリカの研究者からの連絡で、「昔からの古いストレリチアの自生地が消えてなくなっています。当時の写真を提供してもらえませんか」
とありました。やはり、くるべきものが来ているようです。私が体験してきたストレリチア自生地が、昔物語になりつつあります。私が行っていた頃でさえ、自生地の開発が起きていたのですから、これは不思議なことではありません。
南アフリカのストレリチア自生地は国有地と私有地とあり、いくら珍しくないとはいえ、私たちの野原のタンポポやツクシのように自由に勝手に摘み取れるわけではありません。いざ、手に入れようとすると意外に高価で、そう簡単ではありませんでした。
株も販売されていても決して安くはなかったのです。結果として盗掘も多く、自生消滅の原因の一つともなっていました。私有地でやれば泥棒扱いですから、国有地の被書が多かったようです。交通の便の良い地域は真っ先きに狙われ、パテンシーのような不便な私有地の奥地はしばらく持ちこたえる事が出来るでしょう。
私の仕事である育種は、すでに自然から離れてしまっていますが、ストレリチア本来の姿を知るには自生地の存在は貴重です。
