ストレリチア秘話No.465 ストレリチア矮性種の生き方

ストレリチアには様々な変異があります。草丈だけでも2mにも伸びるノッポから、50㎝にもならないコビトまで様々です。ストレリチアの交配、育種で苗を育てていますと、この両者が必ず現われます。ということは、自然界で、このような特殊な姿が生きられる場所があるのを示しているのではないでしょうか。ただし、出現する数が少ないのは、住める場所が少ないことも意味しています。

 この両者の内、高性種より矮性類の方が人気が高いのは、住宅事情の点もありますが、何より、身近かに置けることにあるのではないでしょうか。したがって、ここでは矮性種に焦点を当てて話を進めてみたいと思います。

 私はストレリチア自生地調査で、意外な場所にストレリチアが育っているのを見たことがありました。そこは、東アフリカイーストロンドン近郷のクエレハ川の川口でした。

ここは、私が一番お気に入りのストレリチア自生地で、川岸の数十メートルの高さの断崖の中腹にレギーネが点在しています。しかも、その一つ、一つが美しい姿で、花もきれいなのです。私の関心は近くのストレリチアに集中してはいたものの、ふと、視線をずらすと、すこし離れた大きな岩の積みかさなった断崖の頂上に小さめのストレリチアが生えているのが見えました。え、こんな所までストレリチアが、と驚きました。断崖の頂上の岩場ですから、土は少なく、乾燥も激しいでしょう。しかも、海からの風をまともに受ける地形です。従って、木や草などはなく、ストレリチアだけが生きていたのです。つまり、競争相手がいないのです。中腹のストレリチアの廻りには草がいっぱい生えているのにです。そのストレリチアだって、大きな体だったら飛ばされてしまうでしょう。また、水もすくないでしょう。矮性種でなければ生きてゆかれない立地だったのです。

南アフリカではストレリチアの自生地がつぎつぎと消えていると伝えられます。でも、ここは、まだ残っていると思っています。人による開発が原因ですから、川岸の断崖では利用価値がないだろうからです。被があるとすれば台風です。霜はない国ですが、大洪水が時には襲ってきます。でも、川の水位が数十メートルにまで達することは、そうそう、ないでしょう。ここは安住の地なのです。背の高い競争相手もやってきません。ただし、厳しい条件を我慢すればの話ですが。

ストレリチア矮性種の泣き所は、体が小さいために光合成も、蓄える養分も少ないために花が、なかなか咲かせられないことにありますが、こんな安全な場所に生きられるなら、自分の生存を優先すれば良いのです。数百年以上も生きるのですから、その間に1回や2回は花を咲かせ、子孫に伝えれば十分といえるでしょう。

これからストレリチア栽培は、矮性に人気が出てくるかも知れませんが、こんな形質を身に付けているのですから、付き合うのは簡単ではありません。