南アフリカの自生地調査を始めた頃は、ストレリチアは、何と荒れ果てた土地に生きているのだろうという印象を持ちました。大きな岩がゴロゴロしていたり、土は赤茶けて小石混じりで、養分などありそうもありません。生きるには容易ではない土地にやっとで生きている植物、というのがストレリチアに対しての私の第一印象でした。
それが何度も通う内に様々な情報を伝えられ、私の考え方が変っていきました。荒れ果てた土地ではなく、植物の生長に必要な成分はすべて保持していると伝えられたのです。ストレリチアが荒れた土地に生きているように見えたのは、雨が少ないので余分な草が育たないのだとも分ってきました。ストレリチアは自分に相応しい土地に住んでいたのです。
東ケープ州のインド洋沿いの地域は気候に恵まれ、数多くの植物の自生が見られます。山一つ越えると違う植物に出会う、といわれるほどなのです。勿論、気候の差ばかりが原因ではありませんが。植物同士の関係もあるでしょうし、複雑な要因の上に成立っているらしいのです。そのような環境の中で育て上げられ、築き上げられてきたのがストレリチアと言えるのではないでしょうか。何もないのにポット出て勝手に生きてきたのではないのです。
植物の世界も長い歴史をかけて出来上がった社会には後から参入することは出来ません。
周囲が許してくれないのです。ところが、ストレリチアが誕生して南アフリカの植物社会へ参入した頃は、まだ未開直後で空白だったか、あるいはまだ完成していない時期だったのではないでしょうか。それならチャンスがあったのです。こんなことを書いても絵空事に過ぎませんが。まあ、想像するだけです。
