「ストレリチア秘語 500号」を記念して、ストレリチアの基本的な事柄を取り上げてみたいと思います。
「生物は、独立した存在ではなく、その生まれ、育った環境に大きな影響を受けている。いや、環境とは切り離せない、環境、そのものなのだ」と生態学は主張します。それでも、故郷の環境から離れられない種もあれば、世界中、どこでも生きてゆける国際派までの広がりがあります。ストレリチアは国際派なのですが、それは環境との関わり方にあるのではないでしょうか。
ストレリチアは環境べったりに生きる受け身の姿勢ではなく、自立した個性があって、厳しい環境にも適応している、或いは、耐えている、といえるのではないでしょうか。だから、また、別の環境に移っても耐えられるのかもしれません。
野生動物は捕らえてきても、人間社会には、そうそう、なじもうとはしてくれませんが、植物には広い適応性を持つものか少なくありません。私は、ストレリチア コウダータの自生地調査で訪れた南アフリカ北部の山岳一帯にユーカリが大量に植林されているのを見て驚いたことがあります。パルプ材としてなのです。ユーカリはオーストラリアを中心とする一帯が原産で、アフリカには元々、なかった植物です。それなのに、堂々とした姿を見せていました。ストレリチアだって同じ生き方をしています。
とはいえ、野生動物でも世代を重ねて飼育しているうちに人間社会に溶け込んできます。
植物でも同様で、原種は自生地の環境を身につけていますが、人工交配種となると、この野生味は段々とれて、終いには、人工環境が故郷となってしまいます。
ストレリチアは、まだ、交配代数が浅いせいもあって、野生の姿をとどめています。これから先、変わるか、変わらないかはわかりませんが、原種の保存は大切です。交配種は、いくらでも作れますが、人には原種は生み出すことが出来ないからです。例え、原種同士を交配しても、それは人工操作であり、生まれた苗も人工環境で育つので、自然から離れてしまっています。
私が現在、注目しているのが、パーヴィフォリアセットラーズパークです。この品種の解説は他の章で取り上げましたから省略します。両親は共に原種であり、交配したのもサンパードであって、人の手が加わっていません。ここまでは原種として(遺伝上も)認めても良いのですが、播種、苗の養成は人工です。これでは純粋の原種とはいえません。せいぜい、甘く扱って『単原種』ともいうべきでしょう。それでも、興味深い遺伝形質をいくつか持っていますので、これからの交配親として期待しています。私は、3本の苗を南アフリカから持ち帰りました。それが、そこにあった、すべてでしたが、他にも残って、いたか、どうか分かりません。生まれた経緯からして、数は少ないはずです。仮に残りがあったとしても、一代目はオレンジですから、持ち主が特別な知識の持ち主でない限り、がっかりして、その他、大勢の扱いで埋もれてしまうことでしょう。このような事情からも、本家は我が家に移ったと見ています。
ストレリチアはみな、同じような姿をしていますから、外から見た限りでは区別がつきませんが、多くの数の中には特別な事情、歴史を抱えているものもあるのです。これをみつけだすのもストレリチア栽培の楽しみの一つでしょう。
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