ストレリチア秘話No.506 ストレリチア栽培の第一歩は

 或る人が助けを求めて、ヒョロヒョロに痩せ衰えたストレリチアを連れてきました。様子を聞くと、冬ばかりではなく、一年中、室内に入れておいたとのことです。寒さを始めとする障害から守るための処置だった、とのことです。次に、別の人が、根が腐って、今にも倒れそうなストレリチアを持ち込んできました。その人が言うには、「私は、一日、一回は、植物に水をやらないと気が済みません。だって、植物って、水が必要なんでしょう?」

 と。この二つの例は極端ですが、これに近い話でしたら、もっと多いのではないでしょうか。

 この場合、相手が人間の言葉が分かればお互いの対話で、誤解は解消出来ますが、困ったことに植物相手では無理というものです。

 この場合、やるべきことは、相手の立場を知って、何を望んでいるのかを察し、言葉や気分でなく、行動、処置で表わす以外はありません。これが「植物の栽培」なのです。近頃、植物にも意識があるのではないか、の研究が進められています。たとえ、植物に意識があるにしても、脳や神経系をもった動物とは、大きく、かけ離れた構造でしょうから。擬人的(相手を人間のように扱う)な応対をするわけにはゆきません。

 例に挙げたお二人は、ストレリチアの望んでいないことをやったわけではありません。間違いは、優先順位を取り違えた、のと、水の適量がわからなかったことなのです。ストレリチアの生育に必要な条件は数多くあります。でも、困るのは、お互いに矛盾することもあることです。「あちらを立てれば、こちらが立たない」ことが起きてくるのです。この難しい判定を下すに当って必要なのは、

「ストレリチアとは、どんな植物なのか」

「その時、何を望んでいるか」

 を知ることでしょう。そうすれば、それに応じた適切な処置を施すことが出来るのです。