ストレリチア秘話No.529 バードウオッチング「サンバード」

 ストレリチアに直接、関係があるわけではありませんが、大切なパートナーのことですから、知っておいて損はないでしょう。今までにも、折りにふれては述べてきましたので、これは補説です。

私はストレリチアの自生調査の折り、サンバードの観察に集中したことがありました。場所は、ポートエリザベスのセットラーズパークが便利でした。ストレリチアの近くに座って待ち受けていると、次々にサンバードが飛来してきます。数十羽の集団です。鳥は体が小さいほど、動きが細やかで速いですから、一刻もジッとすることなく移動してゆきます。私は撮影のために 1000mmの超望遠レンズを持ち込みました。このレンズは離れた所から撮影できる長所がありながらも視野が狭く、小鳥を捕らえるのが容易ではありません。見えたと思ってもシャッターを切る前に、すでにいなくなってしまっているのです。一瞬を捕らえるしかありません。当時のフィルムカメラでは、日本へ帰って現像するまでは結果が分りません。写っているか、どうか、自信が持てません。それでも、一つのグループが去っても、しばらくすると次のグループがやってくるので、なんとかチャンスはありました。

そこでの観察の結果、分ったのは、サンバードは、チョコ、チョコ、っと蜜を吸うだけで授粉活動をするのを見たことが無かったことです。これから類推すると、ストレリチアの授粉は頻繁に起こることでは無く、何十回となく繰り返される行動の中で、何かの拍子で、偶然のようにして成功することではないか、ということです。これでは1,2回、鳥が訪れるくらいでは成功の確率が低いでしょう。

 やがて、私も慣れてきて、扱いやすい 200mmの中望遠レンズを使うようになりました。

 花の近くに座って、じっとしていればサンバードは安心して近寄ってきてくれることが分かったからです。彼ら、集団で行動する鳥は、警戒は集団によりかかり、個々の鳥は、そんなに過敏ではないことに気づいたのです。

 私の収穫は、鳥も花も、そんなにキチンとした行動ばかりでなく、結構、あいまいな部分があるんだなあ、ということでした。