ストレリチア秘話No.578 ストレリチアの「あこがれのモデル」

 創出が望まれる現代のストレリチア世界に欠けているもの、それは、お手本となるような理想像が未だにどこにもない、ことではないでしょうか。

 「あるところで見ました。ああいう素晴らしいストレリチアを我が家に置きたい。育ててみたい」

 という声を聞きたくても無理です。そんなストレリチアは、どこにも存在していないからなのです。美術品では国宝級から始まって数多くの名品が人々の鑑賞に応えてくれています。

 宝飾品から車に至るまで、見る人のため息が聞こえてくるほどです。私は、ルーブル美術館のレオナルドダヴィンチの「モナリザ」を見に行った際、この絵を前にして、一人の画学生が模写に励んでいるのに出会いました。後で聞いたところによると、優れた技術の習得には模写が有効とされていることでした。絵については勿論ですが、私は、あの場面が忘れられません。

植物の世界でも、盆栽には名品が揃っています、庭園だって名園には事欠きません。それぞれが後から続く人たちのお手本になっています。ストレリチアも、やっと、ここまで成熟してきました。そろそろ、お手本が生まれ出て良い頃では無いかと思っています。

 私とて、全然、手をこまねいていたわけではありません。気に入った鉢を探し求めて、大株仕立てを試してきましたが、ここ数年、株を殖やす方に力が入って、「ストレリチアの理想のお手本作り」をおろそかにしてきたことを反省しています。