ストレリチア秘話No.599 ストレリチアに年齢の差があるだろうか?

 私は仕事柄、毎年のようにストレリチアの交配をして新品種を生み出そうとしています。

 一つの親株からは数本から、多ければ2、30本、同じ系列からは数10本の兄弟、同期生が生まれて、早いので数年、遅いので10年もかかって開花し、評価が決定されてゆきます。

 大柄な形質の苗は早く、矮性は遅れる傾向があるものの、皆、同期生であることに変わりはありません。とはいっても、同期である証拠は、どこにもありません。

 20年前であろうが、数年前の新しい交配であろうが見た目に違いは認められないのです。

 実生苗ばかりではありません。100年も前に自生地から掘り上げられた原種を調べてみても老化の兆しが認められないのです。こうなってくると、ストレリチアには、年齢の差があるのだろうか、疑問が湧いてきます。

 ストレリチアが南アフリカから文明社会へ運ばれてから、二百数十年。その株は、まだ、生きています。掘り上げる前に、すでに数百年は生きてきたでしょうから、これから先、どれだけ生きられるのか、私たち一代の寿命では測れません。ストレリチアの寿命が数百年、千年というのは、単なる言葉の袋でしかないでしょう。私たち人間の寿命からみれば、数世代ぐらいは問題ではなく、無限とさえ考えても良いくらいです。

 このような結果を生み出すのは、ストレリチアの新芽が毎年、更新され、いつも新しく、若々しい姿でいられるからです。これでは、いつ、終わりが来るのか確かめようがありません。

 このストレリチアの寿命を取り上げるのは、これを教訓にして頂きたいからなのです。

 千年も生きる植物を手に入れるには、それなりの配慮が必要です。入手した品次第では、一人の人の、「一生の伴侶」どころではなく、子々孫々にまで受け継がれることになるかもしれないからです。

 この不思議な植物、ストレリチアを前にすると神秘的な感じがただよってきます。