ストレリチア秘話No.250 ストレリチアの常識は破られる

 今まで、それが当たり前、とされてきたことが、実は、そうでなかった、と変更しなければならないことが起きるのが、この世の中のようです。

 ストレリチアの花芽は夏から顔を出し始め、8月末から9月が最も多く、以降、涼しくなるにつれて少なくなり、いちばん遅いジャンセアでも10月一杯で終わりでした。ごく遅れて11月にでることはあっても、それは珍しいことだったのです。

 その常識が「ジャンセア ゴールド」の出現によって覆されてしまいました。この系統は11月になっても顔出しは止まず、12月になっても、未だに出てきます。とうとう、最終は暮れから正月と、記録的な出方を見せました。だからといって、早咲きがなくなったわけではありません。つまり、超遅咲き、まで出てきて開花期が広くなった、ということなのです。これで「ジャンセアは開花期が狭い」という欠点は解消されてしまいました。

 ストレリチアの開花についても少々の思い違いがありました。ストレリチアの開花の適温は20℃~25℃です。せいぜい15℃ぐらいなければ順調な開花は望めません。ハウス栽培であれば夜の低温になっても日中は、日が当たれば十分に温度は上昇しますから問題はなかったのですが、台風のために温室が吹き飛ばされてしまったために、止むなく路地栽培にしたところ、開花の条件が失われてしまい、低温での開花状況を観察するはめになってしまいました。

 そこで分かってきたのは、ストレリチアは低温でも開花できる、ただし、生長は遅く、日数が掛かるだけで、必ずしも高温でなければならないことはない、ことでした。ただし、ここでいう低温は1℃までで、凍らせてはならないことは当然です。それにしても日数が長引くために、様々な障害に遭うチャンスが多いのは確かですが、これはしかたがないことです。

 この二つの例は私たちに大きな教訓を与えてくれます。それは今まで身につけてきたストレリチア栽培の知識、技術が未来永劫、変わらない保証はない、ということです。いつ変わってしまうか分からないのです。これに対処するには研修を怠らない、ことしかありません。