ストレリチア秘話No.298 ストレリチアにもある「一期一会」

「この出会いは、一生に一度、この時しかい。大切を機会、との心がけを持ちなさい」

この教えは、必ずしも高尚な場だけにあるものではないでしょう。私はストレリチアとの出会いにも同じ思いを感じています、ストレリチアの世界は、まだ、未成熟で発展途上です。不確かな事柄で一杯ですから、例え、幸運な出会いがあっても、気がつかないで通りすぎてしまう事があるに違いありません。でも、それでは、折角のお宝を逃がしてしまうことになってしまいます。

 カリフォルニアでも、南アフリカでも、花の解説書に花色の説明で、「ブライト、光り輝く色彩」という言葉に出会ったことがあります。私は、長い間、これは英語特有の大げさな表現で、普通よりは綺麗です、ぐらいの表現だと思っていました。ところが2年前、本当に光り、輝く色彩のストレリチアに出会ってしまったのです。ジャンセアゴールド実生苗の初花です。★★★★★星クラスの優秀花なのですが、見れば見るほど、引き込まれてしまうほどの輝きがあります。私は今まで何万、何十万ものストレリチアの花を見できましたが、これほどの鮮やかさを持った花は初めてでした、それなのに、どうしても欲しいと乞われて渡してしまいました。命名する暇もなく、私の、手元から消えてしまったのです。今になってみると、片割れを残しておくべきだったと悔やむのですが後の祭りです。実は、ここに育種家の弱点というか、甘さがあるのです。「この株が出現したのだから、また、次もあるだろう」と考える習性があることです。

 ところが、その後、何年たっても次は現われる気配はありません。やっばり、あれは、本当に「一期一会」だったのかもしれません。

その後、勉強して分かったことがあります。花びらの中、3層目はスポンジ層と呼ばれて、細胞の際間に空気が入り込んでいて、それが光りを反射して花色の発現に力を貸していることでした。ですから、このストレリチアは、ここの構造が特別に優れていた、ということなのでしょう。

 ストレリチアの入手にはいろいろありますが、一つの方法は、まだ、株分けで殖やされていない「一品もの」を狙うことです。(品の良否は別として)ただし、今のところ、まだ、そんな人は現われていません。そうとは知らずに手に入れた人はいるでしょうが、それを自覚していないのでは本物の「一期一会」とはなりません。