ストレリチア秘話No.320 頑固の極致 ジャンセア無葉系

 私はジャンセアの交配、実生苗を約 1000本養成したことがありました。実生苗は様々な変異が生まれますが、その中でも、一番、目立つのが薬の形の変異の広がりです。それまでにレギーネの交配は繰り返してきましたが、ジャンセアの結果には驚かされました。父親も母親も、無葉系を使用したのに、その子供達は、大きさは様々ながら、小さな葉をつけたパーヴィフォリアと呼ぶべき苗が30%を超える割合で現われたのです。どうも、ジャンセアは先祖へ帰ろうとする傾向があるのではないか?これはわたしの邪推かもしれませんが。

 他の形質の現われも、私の期待ほどではなく、ジャンセアを思い通りに動かすのは容易では無いことを思い知らされました。

 それなのに、と、私はジャンセアの自生地、ユイテンハーグやブラックヒルでは、自生株は、すべて無葉系であったことを思い出したのです。自然のジャンセアは先祖返りをしょうとしないに、なぜ、人工交配では、こうなってしまうのか?いまだに、この謎は解けません。

 現在でも、ジャンセアゴールドで交配を続けていますが、この傾向には変わりはありません。いまでは、もう、こんなものだろう、とあきらめています。

 何しろジャンセアは、ストレリチアでは一番、進化した種ですから、頑固さも輪をかけています。それを動かそうといじり回すのが私です。そうそう、思い通りに事が運ぶわけがありません。いじる、といっても、植物体ではなく、遺伝のほうなんですけれども。

 このようにジャンセアは、「孤高」ともいうべき頑固さを持っていますが、私は、兎も角、一般の、特に、ものぐさな人、にとっては、こんな有り難い植物はありません。面倒をみてくれなくても、「我が道をゆく!」と平気で生きてくれるんですから。