ストレリチア秘話No.403 「先を読む」これがストレリチア栽培のコツ

暑くて、やることもないので、栽培場の棚下の整理を始めました。キチンと敷理することが苦手な性分ですから、これは整理、整頓のためではありません。れっきとした目的をもった作業なのです。

 その目的とは、3年後に予定している苗や株の置き場が必要になるので、今から準備しておこうということなのです。大陸の広い敷地での栽培なら、施設も置き場も楽に広げることが出来ることでしょう。しかし、この狭い日本では、よほど恵まれた人でない限り、ギリギリの空間でやりくりをしなければならない宿命を背負っています。

 それにストレリチアの持つ特殊性も関わってきます。特に苗の養成をしている場合は、成育するにつれて、必要とする場が広がってきますから、これに合わせなければならないのです。大きな施設を作れば簡単に解決出来ますが、今度は経費、運用面で問題が起きてしまうのです。私も、一度やって、こりごりしましたので、現在では、出来るだけ施設をひろげないで、伸縮自在なやりくりをするように心がけています。

 それにしても、3年先のことなのに、「なぜ、今から?」と思われることでしょう。実は、ここにストレリチアの秘密とさえ呼べる秘密が隠れているのです。ストレリチア栽培では、

 1年草の草花や野菜のように毎日、手をかけなければならない作業は殆どありません。しかし、やらなければならない仕事はあるのです。これを誤解してしまって、何もやらないで済ませてしまう人が何と多いことでしょう。結果として、進歩が止まり、やがて、にっちもさっちもゆかなくなってしまうのです。

 やらなければならない仕事はあるのです。それが「先を読む」ことで、いつも将来への気配りなのです。将棋や囲碁の世界では「先を読む」ことは常識です。高段者ほどのことはできなくても、数手、先を読むことが出来なければ勝つことは望めません。先を読んだからといっても、必ずしも、すべてが、その通りに進むとは限りません。相手の都合もあることですから。

 ストレリチア栽培では、高段者ほどの先が読めなくても、せめて2,3年、できれば数年から10年先までを見通したいものです。「そんな先のこと、当たるとは限らないでしょう」いえ、いいのです。なにしろ、相手は千年もの寿命の持ち主です。目先きの事柄だけでの対応は無理、というものでしょう。

 世の中には人まねが得意な人がいます。ところが真似したくても、「先を読む」作業は見えないことが多いのです。これでは真似したくても出来ません。時にはチラリと姿を見せることがあっても、たいていは常識を越えたことが多いので見逃されてしまいます。その後、ようやく成功した段階で姿が見えてきますから、やっと、ここから真似が始まります。

でも、始まりは数年、或いは10年も前だったのです。ストレリチアの場合は、真似ても、これだけの年数の開きが出てしまいます。これが内弟子、或いは似たような立場の場合は少々、違います。くわしいことは分からなくくても、師匠と共にする時間が多いのから、何かが始まったのが、すぐ、分かるのです。