ストレリチア秘話No.442 ストレリチア品種の特質を知るには年数が掛かる

私の手元にはジャンセアゴールド誕生の第一号が置いてあります。草姿もよく、赤い花首も美しく、★★★★★星の優秀品種としてランク付けしたいと思っていました。しかし、開花2年目までは花は1本ずつしか出なかったので、花立ちの点が不満なので、評価を控えていました。ところが開花3年目の今年の秋、2条立ちの株にそれぞれ1本ずつ、計2本の花芽が出てきたので、これは見直さなければ、と思っていたところ、初冬の12月に入ると、またまた1本ずつ、計2本が顔を出してきたのです。これで4本になったので驚きました。1条あたり2本の花立ちとなると、最高のランクです。これで晴れて★★★★★星の仲間入りが出来ます。まだ、命名にはいたっていませんが。

 私は、このことで、つくづくとストレリチア品種の評価の難しさを思い知らされました。

私の仕事の中心はストレリチアの育種ですが、自分の手がけた最終的作業が作品の評価です。これで決まるのですから、重要さは、この上もありません。ひとつ、ひとつの部分的チェックから始まって、最後は総合的評価となるわけですが、あいまいさは避けられません。神様ではありませんから、すべて間違いなく、とはいかないのです。その上、このゴールド1号のように何年も掛けないと本性が判別出来ないことも起きてくるのです。

 このゴールド1号は、或る愛好家一人に株分けされて嫁入りしていますが、その後、音信不通なので、このことを知らずにいます。情報交換は必要なのです。自分の持っているストレリチアの価値を知らずに栽培しているなんて事が起きてしまうからです。愛好家は誰でも、自分の手がけている品に愛着を持っています。しかし、それは情緒的盛りが多く、客観的には首をかしげることも少なくありません。時には、他と比較してみないと、ひとりよがりになってしまうことだって起きかねません。

 ここでは花立ちの変化を取り上げましたが、変異を起こす分野は、まだまだ、多くあります。開花時期もその一つです。これは頻繁に起きます。早く咲いたので早咲きかと思ったら、翌年からは遅くなってしまう事は珍しいことではありません。これには、植物体内のホルモンのせいでしょうが、気象条件など、外部の影響も入ってきますから原因は複雑です。花色の美しさにも、わずかながら変化が起きることもあります。驚くほど大きな変わり方ではありませんが、株が古くなると、やや美しさを増すこともあります。こちらは株が充実することによって溜まる養分構成が違ってくるからでしょう。

 このようなことが起きるのですから、早々と「この品種はこうだ」と決めつけてしまうと間違いを起こしやすいのです。ストレリチア品種の評価、やっぱり、簡単なことではないですね。