前の章に続いて原種と交配種の違いを見てみましょう。
人が、つい、ストレリチアを自家受粉で種子をつけてしまったのは、稲のように自家受粉の植物を思い浮かべた結果で何の不都合も感じなかったからでしょう。一方には、野菜のように自家採種では、性能劣化を招く植物もあることを脇に置いてしまったのです。自家受粉、近親結婚では、同じ系統の遺伝子を重ね合わせるのですから、良くも悪くも、その遺伝形質が強調されます。同時に異種交配だったら隠れている劣性遺伝まで表面に現われるのです。良い点が強調されるのは悪いことではないのですが、欠点まで強く表われるのは困ります。人間社会でも、ヨーロッパのハプスブルグ家に起きた、近親結婚を何代も続けた弊害が例に挙げられます。稲や麦のような栽培植物は自家受粉を何代も繰り返して、遺伝形質が安定したもので「純系」とよばれています。ここまでやれば、良い形質を固定することもできますが、全体に弱い体質になり易いのは避けられないようです。
自然のストレリチアは、自家受粉を避ける仕組みを持っています。これが、原種が、まあ、まあ、以上の性能を維持している原因なのです。自家受粉の弊害をもたらしたストレリチアを生み出したのは、この自然の摂理に反したからだといえるでしょう。