ストレリチア秘話No.533 ストレリチアの系譜

 馬でも、犬でも、或いは猫であっても、その個体が先祖、代々、辿ってきた道筋や同類の広がりが調べられます。どのような系譜の上の存在なのかを知りたがるのは人情の表われであり。また、科学的探究心の結果でもあるからです。ストレリチア栽培家とて、その例外ではありません。

 原産国の南アフリカでは、国内、至る所にストレリチアが植えられていますが、どんなに数が多くても、元をたどれば自生地から掘り上げてきた原種で、それが殖えて株分けされて増えたものです。人工的に種子から育てたのは、ほんの僅かしかありませんから、ここでのストレリチアニ原種、と見て良いでしょう。その種子でさも人工交配でなく、自然採取がほとんどです。

 南アフリカ以外の国々で栽培されているストレリチアは、殆ど、大部分が人工交配種です。それはストレリチアが大きく、重いために輸送が簡単でなく、結果として種子から育てることになったからです。我が国、日本も同じで、ハワイ、カリフォルニア、南米、ヨーロッパ、など、多くの地域から流れ込んできています。間違えてはならないのは、移出国が違っても、皆、同じようなものなのです。それらの国は単なる通過地点に過ぎず、元をたどれば、全部、南アフリカ出身なのですから。多少の個体差がありますが、大きな目で見れば似たようなもので、取り立てて強い個性は感じられません。意図をもった交配、育種ではなかったからです。

 以上が、大まかな状況ですが、このような一般のストレリチアとは別に、近頃は優秀品種の作出を目指してエリート集団が現われつつあります。この系統が将来のストレリチアを開拓してゆくことになるでしょう。