ストレリチア秘話No.541 「新陳代謝」こそ、精鋭 養成の秘訣

 私のストレリチア圃場の一角には、捨て場があります。毎年、不要とされたストレリチアが捨てられ、積み上げられます。ストレリチアは丈夫な植物ですから、捨てられても、すぐには枯れません。1年目は半死半生の状態で、2年目に、ようやく枯れてきて、3年で消え去ります。これが毎年、繰り返されています。

 ところが、3年前、今までの例にない大量の株が捨てられ、山が出来たのですが、それが、ようやく消えて、ホッとしたところです。実は、10年近く前にジャンセアの交配、育種で約1000本の苗を育成し、その後、開花したものから選抜を繰り返してきました。その結果、残したのは***星、以上の優秀花、50本程度でした。

この頃は、まだ、優れた交配親がなかった結果です。その後、何年、待っても花を咲かせない株が多いのに気がつき、とうとう、大量廃棄となってしまいました。それは「死屍累々」の表現がピッタリのありさまでしたが、今年になって、整理がついたところなのです。

 こんなことは、品種改良の上から当然のことで、なんら、不思議はありません。優秀花は多くの犠牲の中から生まれてくるものですから。それだけに貴重なのです。

 ストレリチア栽培も初心の内は、数が増えてくるのは喜びで、捨てることなど考えられません。ところが長年、続けている内に、いつのまにか数が増えて、気がつくと置き場が満杯となってしまいます。こうなったら、やるべきことは、ただ一つ、「新陳代謝」しかありません。ところが、これが乗り切れる人が多くないのです。古くから育ててきて、愛着が生じて手放せないといった気持ちもあることでしょう。或いは、長年の栽培の結果、意欲が低下して、向上心を失ってしまったのかもしれません。ストレリチアとは長い年月の付き合いになりますから、やがては、必ず出会う段階なのです。ベテランは、これが問われる日がやってきます。