これは栽培の指針ではありません。ご参考までにのお話です。なにしろ、植物園向きの植物であって、私たち、一般家庭では手に負える代物ではありませんから。例え話の、「乞食が馬をもらった」ようなもので、面倒見切れないのです。
昔の古い分類では「オーガスタ(大きくてりっぱな)」と一括りにされていましたが、現在では、ニコライ、アルバ、コウダータと3種に分れています。この内、アルバは日本へ入っていませんし、コウダータも私が数本、育てただけで、現在は手元に残っていませんから、結局、私たちの身の回りにあるのはニコライだけです。この3種は大筋では似ているものの、殖え方には違いがあります。
アルバは、殆ど子株が出ないに対して、ニコライは、あきれるほど殖えます。自生地の風景でも、アルバやコウダータは散在するのに対してニコライは殖え過ぎて、他の植物を寄せ付けない純林を形成してしまうほどです。南アフリカの園芸書に「ニコライはインスタントの庭園づくりに向いている」と書いてあるのもあります。
これら大型種は、成熟すると高さが10m~15mにもなりますから、一般家庭では置き場がありません。若い子株のうちは2~3mまでは何とか収容できても、花を見るまでにはいたりません。結果として、利用価値は観葉植物としての扱いです。なにしろ、葉が大きくてりっぱですから。私が相手をするお客さんの中には、そんなこととは知らないで手に入れた例が多くあります。「白い花」だから、と、ただ、それだけの理由で、後のことは全然、知らなかったのです。
困る事は、まだあります。無茎の小型種よりも寒さに弱いのです。これでは屋外に出すことは出来ません。沖縄ですら、本来の大きさには育ちません。同じストレリチアであっても、大型種と小型種では大きな違いがあるのです。従って、私のところでは、話の種であって、実際に取り扱う対象ではありません。
最後の南アフリカ訪問の時、まだ、日本に入っていないのなら、とアルバを探したことがありました。ようやく見つけたのが子株で1m50cmもあり、送料を尋ねると2万円を越えるのであきらめました。私にとっては、それ位の価値だったのです。