理想のストレリチアとは典型的なストレリチアがあるとすれば、誰もが持ちたいと望むことでしょう。優秀品種と呼ばれるのと、少々、ニュアンスが違います。「これこそがストレリチア」「ストレリチアの中のストレリチア」「理想のストレリチア」なのです。勿論、優秀品種も部分的には含まれますが、イコールというわけではありません。
もし、そのようなストレリチアがあるなら、手に入れたいと思いますか?実は、あるのですが、今まで、そのような条件を付けてきたお客さんが殆どいないのです。価格は安くはありませんが、それでも手が出ない、というほどではありません。大抵は、逆なことを望んでいるからです。
簡単に言えば、理想のストレリチアとは、「増えの悪いストレリチア」
のことなのです。でも、困ったことに数が多くありません。
ある栽培場で株が殖え過ぎたので、重機を使って掘り上げ、株分けし、10倍になったのを見ました。これは珍しい例ではありません。ストレリチアの寿命は、荒っぽい予測では千年もあります。数年毎に倍、倍と殖えていったら、どうなることでしょう?
自生地のストレリチアは少なくとも数百年は生きてきた筈です。それなのに、驚くほどの大株を見たことがありません。殖えすぎて隣同士が接触することなどなく、皆、程ほどの増え方しかしていません。千年の生き方をしているのです。
ひるがえって人工栽培では、野放図に育って、殖えているのが珍しくありません。ブレーキが故障してしまったみたいです。つまり、本来のストレリチアらしさから逸脱してしまっているのではないかと思えるほどなのです。増え過ぎは人工栽培が引き起こした結果でしよう。
この両者、見た目にも違いがあります。柔らかく、伸び伸びとした感じ対カチカチに締まった姿です。先へ先へと進もう、対、止まって守ろうとする姿勢の違いでしょうか。養分の使い方に違いがあるようです。千年も生きるには、ゆったりと生きる戦略の方に軍配を挙げたいと思っています。
私の圃場にある「増えの悪いストレリチア」は皆、花立ち抜群で、その年に生産された養分はあらまし消耗してしまうために、殖えに回す余力がないのです。ストレリチアは増えがよいのを良しとする貧乏性は、千年も生きるストレリチアとは方向が違っているのではないでしょうか。
このような条件をクリアーしても、私のところでは、もっと厳しい審査が待っています。
花が美しくないとゴミ捨て場行きになるのです。こんなことで「理想のストレリチア」は相変わらず希少なのです。でも、芳しくないストレリチアが世の中に氾濫するよりはいいと思っています。