ストレリチア秘話No.44 ストレリチア 自生地 こぼれ話 その4

 マルーラの果実の用途はまだ、あるのです。やはり、宝物なんです。お酒を造るのに果肉を取り去った後に桃に似た核が残ります。これを採っておいて、後で閑なときに女性たちが集まって、これを石の台の上に乗せて小さな石でたたいて割ると、中から2こ柿の種に似た種子が顔をのぞかせるのを、動物の骨でつくったヘラで突っつき出す。これがお宝なんです。この種は特別に味がよい、いわば珍味で、大切なお客さんが来たときだけ提供するものであって、ふだんは滅多には食べられない高級品なんだそうです。

 原住民は食用にするのですが、ヨーロッパ、近頃は日本でも、高級化粧品として使われます。この種子から絞った油は特別で、小さな容器に入れられて、驚くほどの高価で売られています。それほど有用な木であるのに、まだ、自然にある木からだけ採取しているだけで、人工栽培はされていないのです。

 私が、あと20年も若かったら、手がけてみたいと思うのですが、残念ながら、意欲だけあっても、体力も時間もありません。こんな記事を書くのは、それでは、やってみようとする人が出てくれないかなあ、との気持ちからなのです。但し、成功する保証はありません。この木が日本で育てられるのか、どうかは、やってみなければ分かりません。何しろ、5mを越す高木で、乾燥地帯の産なのです。発芽させるのも一苦労するのは確かです。いや、それどころか、調査のために現地へ行くことすら大変なんです。交通機関などはない僻地、勿論宿泊施設など、あるはずがありません。やっとでたどり着いたところで、村の酋長との折衝もしなければなりません。なにしろ、一本、一本の木に、それぞれ、権利を持つ所有者がいるらしいのです。種子を手に入れるのも大変なことと思います。

 それでも、「やってやる!」挑戦者が出てきてくれないものでしょうか。これにひきかえ、私のストレリチアの自生調査や研究などは、殆ど、お遊びだ、とさえ思えてきます。