ストレリチア栽培で最も関心が集中するのは、花が出るか、出ないかの問題でしょう。他の花では、のんびりとしたペースで花が出るのは当たり前のものが多い中、これはストレリチアらしい特徴です。ストレリチアの花芽形成が、どのようなメカニズムで行われているのか、くわしい研究は、まだ行われていませんので、ここでは、私が物語風に語るしかありませんが、それでも大きな間違いがないことを願っています。
ストレリチアの生長については、前にも述べたように成長点が主役でありましょう。しかし、花芽の形成については別な場所、葉の根元の内側にある「花芽の成長点」にある、と思っています。花が終わってから春から初夏へかけてまで、しばらく休んでいた、次の花の成長点が7月頃から、そろそろ働き始めるのです。
まず、動き出していいのか、どうかは、自分の一存だけでは決められません。株としての最大のパフォーマンスですから、みんなの同意、協力が必要なのです。野党、反対派の力が強いと動き出せませんが、花立ちの良い株では、与党の方が強力です。花の原料となる澱粉の製造は真っ盛りですが、まだ、十分な量にまで達してはいません。しかし、それまでは待っていられないのです。待っていたら、すぐに秋がやってきてしまいます。寒い季節の開花には、まだ暑い夏に行動を起こしていなければならないのです。そこで花芽形成の司令塔は「見切り発車」の命令を下します。まだ、突き止められていませんが、特定のホルモンが生成されて、花芽の細胞に刺激を与えるのではないか、と思われます。このホルモンがどこで作られるのか、花芽の頂点の細胞なのか、周辺なのかはわかりません。
このように見切り発車をしなければならないために、時には前にも紹介したように、あまりにも多く花が出過ぎてしまうと、途中で養分の補給がつかなくなってしまう事態も起きてしまいます。
さあ、花芽が動き出しました。後は、開花を待つばかりです。