ストレリチア秘話No.147 「ストレリチアの何を眺めている?」  その1

 No.141で「ストレリチアに会いに行って、眺めていればいいんですよ」と書いて終えましたが、これでは不十分だと気がつきました。

「何を眺めるのか、ボンヤリ見ているだけでよいのか?」

に答えていなかったのです。私は何とはなしに眺める気休めと、目的をもって真剣に観察するのを分けています。私の例を二つ挙げましょう。

 2021年の夏から秋にかけてのことです。ジャンセア ゴールドの交配2代目の結果を調べる作業も終わりに近づいていました。その中に、姿は堂々として素晴らしいのに、どうしても花を出さない二株があったのです。私は、これが気になって仕方ありません。なんとか花を見たいのです。この交配はオレンジと黄色が半々程度の出現率でしたが、もし黄色が出たら、葉姿と相俟って素晴らしい品種が期待できたのです。ただし、オレンジが出る可能性もありますが、たとえ、そうであっても、かなりの品質です。私は期待を持って毎日、通い詰めました。まあ、言ってみれば、お金のかからないギャンブルのようなものでもありました。

 しかし、葉は元気よく育ってくれても、肝心の花は出てくれません。とうとう、秋になってしまい、さすがの私もあきらめて投げ出してしまいました。苗から20年、結果は無惨でした。私はスリルを楽しんだだけですが、これとて、ストレリチア栽培の一駒であると思っています。