ストレリチア栽培では、ふだん肉体労働や力仕事はありませんが、たった一つ、容易なことではない大変な仕事が起きることがあります。これは誰もが経験するすることではありません。ストレリチアの地植え栽培をした人だけに課せられた作業です。
自生地のストレリチアで、年数を経たために特大株となって、どうしようもなくなったものを見たことはありません。厳しい環境の中で、しかも肥料分の少ない土では、繁りすぎになることは有り得ないのです。それに引き換え、人工栽培では、贅沢な環境の中で育てられ、制御されないまま、奔放な生き方が許されますから、やがては、あきれるほどの特大株に育ってしまいます。
増えのいい系統では約10年、普通は15年から20年で、この状態となってきます。そこで掘り上げ、分割の作業が必要となるわけです。これには他の理由で掘り上げ、株分け、鉢植えにすることもあります。
さて、この作業、大変な労働なのです。株の廻りを掘って根を露出させるには40cmか50cmも掘らなくてはなりません。ストレリチアは鉢植えと違って地植えでは、成長点は深く沈んでいますから、30cm位掘った程度では、根をつけて掘り上げることが出来ないのです。
掘り終えたら、スコップを真下に差し入れて倒します。いよいよ株分けです。鋤(すき)があれば便利ですが大きな包丁、ナイフや鋸は必要です。丁寧にやる必要はありません。バッサリやるのが基本です。根を長く残すことはありません15cmから20cmもあれば十分です。株をあまり細かく分けるのは考え物です。安全を考えて大きめにと止めるのが無難でしょう。この作業、丁寧にやることがいいことだと思うのは間違いです。実は、丁寧にやれば、やるほど株を痛めてしまうことが多いのです。
その後、移植します。最初の1年目は回復の期間で、2年目で、やっと一人前の姿に戻ります。鉢植えの場合も同じ事です。驚くのはストレリチアが若返って、本来の姿を見せてくれることです。繁りすぎの大株の時は、姿が乱れ、花も小さく、少なくなっていたのが、まるでうそのように元へ戻ってくれて、やってよかったと胸をなで下ろします。
このようなことを繰り返していますと、「ストレリチアのありたい姿」が見えてくることです。理想のストレリチアは、30年以上も植え替えの必要の無い品種です。これは花立ちが良すぎて株が殖える余裕がないことから起こります。反対に、付き合いたくない系統も存在します。掘り上げ、株分けの痛みも何のその、回復が早くて、何年もしないうちに元の姿に戻ります。花が少なく、養分の消耗が多くないからなのです。でも、こんな品種には近寄らないほうが無難です。