ストレリチア秘話No.156 ストレリチアの進化 進歩 改良

 生物、生命の誕生は父方、母方のDNAの組み合わせで始まります。それは無限に近い数で、私たちは、その、ほんの一部にしか出会えません。結果は自然によってふるい分けわけられます。適者生存です。一番、良い組み合わせが選ばれるわけで、自然は「いいとこ取り」をするわけです。これを『進化』と呼んでいます。

 ストレリチアでは、レギーネからパービフォリア、そしてジャンセアに至った道筋です。私の仕事の育種は、この延長線上にあるわけですが、こちらは結果を自然ではなく、人間が選ぶことに違いがあります。DNAの組み合わせは、ランダム、無作為ではなく、目的をもって選ばれます。結果を選ぶのも、ハッキリとした基準があるのです。

 それでも、人間の抱く欲望は生物の持つ限界を超えることは出来ません。例えば、私が望むストレリチアの形質に「耐寒性」があります。これが達成出来たら、ストレリチア栽培は大きく発展すること間違いなし、なのですが、まだ実現していませんし、その可能性も定かではありません。

 苞の色を美しく、花立ちをよくし、姿を小柄にしたりは出来ても、とても手の届かないことも数多くあるのです。ちょうど孫悟空が、いくら飛び回っても、結局、お釈迦様の手のひらの上だけだった、のようなものです。

 交配はゼロ サムゲームです。トランプ、花札と同じで、一枚入れるには、手持ちの一枚を出さなければならないのです。DNAの数はきまっているのですから、このルールを破ることは出来ません。時には、失ってはならないカードが出てしまうことが起きてしまいます。交配代数の進んだ草花が弱くなって、栽培に手が掛るようになってしまったのを、よく見かけます。耐病性のカードが出てしまった結果です。

 ストレリチアは、まだ素朴な段階で、野生味を失っていませんが、将来はわかりません。心しなければならないのです。ストレリチアらしい強健さを失っては元も子もありません。