ストレリチア秘話No.169 ストレリチアの花は使い分ける

 私は長い間、ストレリチアの切り花栽培に携わってきました。近頃では鉢植え栽培が多くなり、両方の経験から、ストレリチアの花は用途によって仕立て方に違いがあることを痛感させられています。

 鉢植えだけでなく、地植えでも独立で植えられた株の花は、1本、1本の花が独立した姿で、すでに完結しています。しかし、いざ、切り花にして、何本もいっしょに活けようとすると、それぞれの花の個性の主張が強すぎて、調和をとるのが難しいのです。自生地で咲いている花も同じです。これこそ、ストレリチアの花だ、という姿なのですが、他の目的に使おうとすると、容易ではありません。

 これに引き換え、切り花栽培では、集団で育てられていますから、それぞれの花が強い個性を見せず、同じような姿になっています。例えてみれば、馬上の武者と小隊で行進する隊の中の一人の兵士の違いのようなものです。片や、自由に動き回るのに対し、片や、集団として行動する、に似ています。生け花で、ストレリチアの花を1本しか使わない場合は、どちらの花も使えます。しかし、何本も使う場合は、集団育ちでないと調和がとれないのです。

 例え、鉢植え栽培であっても、集団で育てると同じ現象が起きます。この中から一鉢だけ抜き出すと、それは、何となく個性に乏しい印象を受けます。この、どちらが良くて、どちらが悪いといっているわけではありません。それぞれの用途に合わせて育てれば良いのです。慣れない人から見れば、ストレリチアの花は、みんな同じに見えるかもしれませんが、深入りした人から見ると、これだけの差があるのです。