ストレリチア秘話No.179 ストレリチアを栽培する、ということは?

 私は南アフリカの自生地で数多くのストレリチアの育ち方、生き方を見てきました。そこではストレリチアだけが土地を占有している状態を見たことはありません。「プルートの谷」のレギーネや「ユイテンハーグ」のジャンセアは、その地域の植生の中では多数派で、主役とさえ呼べる存在でしたが、それでさえも、数多くの他の植物に取り囲まれていました。その他の自生地では、当然のことながら、多くの植物の中の一つ、「one of them」に過ぎない存在でした。これは自然界では当然の現象ですから、何ら不思議なことではありません。人工的な畑の栽培とは訳が違うのです。孤立に近い状態のストレリチアも時には見かけましたが、それでも、周りの草や木に何らかの制約を受けていました。ということは、「自主独立」で、周囲とは関わりなく生きているストレリチアと出会うことはなかった、ということです。

 これに引き換え、余分な障害を一切、排除して、理想的な環境条件を整えて、その植物の持っている能力を全部、発揮させよう、とするのが人工栽培です。

「ようし、花を咲かせてみせるぞ!」「早く、大きくしてみせる」

と頑張るのは麗しいことです。しかし、それは、その株の持つ[ D N A]の範囲内のことで、それ以上は、どれだけ手を尽くしても無駄となってしまうでしょう。駄馬には駄馬の、サラブレットには、「サラブレットの限界があるのです。

 これを見極めることは極めて難しいことには違いありませんが、これを無視してしまっては無駄な労力になってしまいます。私たちに出来ることはDNAの範囲内だけのことなのです。このためには、私たちの面倒を生かしてくれるキャパシティを持ったストレリチアを手に入れることです。