わたしの住んでいる町はカーネーション栽培が盛んです。現代のカーネーション栽培では、多年草であるのに苗は一年限りで更新します。これは一年でウィルスが侵入して性能が低下することに加えて、植物特許がからんでくることにも関係があるようです。それで農家は、毎年、オランダから送られてくるカタログの中から必死になって有望な品種を選んで苗を注文します。品種の選び方しだいで消費者の好みが切り花価格に現れてくるからです。イチゴ栽培農家もあります。こちらは毎年ではなく、数年おきぐらいで品種が変わっています。
このように目まぐるしく変化する社会に対応しようとしている農家が大部分であるのに対し、私が相手をしているストレリチアの世界といえば、十年一日の如く代わり映えもなく、同じ状況が続いているようです。新しい品種を生み出して、それが世に広まるのを目指すのが私の仕事なのですが、思うようには受け入れてはもらえず、いつも、やきもきしているのが実情です。
でも考えてみると、この変化の激しい世の中を渡るためのストレスにさらされることなく、のんびり、ゆっくりのストレリチアのペースに従って生きるのも悪くはないな、との思いもしてきます。この両極端のジレンマを抱えてウロウロしているのが私なのです。