ストレリチア秘話No.206 ストレリチア奥義 そのⅡ これであなたはストレリチア名人 「ストレリチアの花は粉(こ)を吹いている」 その1 

 私の住んでいる町は「房州びわ」が特産品です。びわの作業の最終工程は果実の箱詰めです。それまでは多くの人の手が関わりますが、箱へ詰める仕事は、駆け出しのアルバイトなどでは、さわらせてもらえません。ベテランでなければ手に負えないのです。果実の選別を始め、熟練が必要とされているのですが、箱へつめる手さばきもその一つです。びわの実は、皮の表面が、白い粉が、まぶされたように覆われています。これに手がふれると、擦られた痕がついてしまい、商品価値を落としてしまいます。できるだけ手を触れないように、そっと扱わなくてはならないのです。とても、素人には任せられません。

 実は、ストレリチアの花も粉を吹いているのです。正確には、苞の部分に、ですが。これもびわと同じで、擦られると粉が落ちてしまいます。それなのに一般に流通している切り花は流通の途中の手荒な扱いのために花店に並ぶ頃には散々な姿となってしまっています。私の所には時々、生け花のお師匠さんが花展に出品する作品のためにストレリチアの切り花を求めにいらっしゃいます。それに対して、花屋さんと同じ程度の花を提供したのでは私の誇りが許しません。最高品質の花を選ぶのは勿論のことですが、傷をつけない、つまり、苞の粉を落とさないよう、細心の扱いを心がけています。流派によって使い方は色々でしょうが、私に注文されたからには、「これぞ、ストレリチア」といえる姿の花を使ってもらいたいからなのです。