ストレリチア秘話No.212 続 ストレリチア 秘伝 「水やりの効能 名人への道」

 アフリカ自生地でのストレリチアにとっての最大の脅威は旱魃(かんばつ)です。洪水は、動物たちや平地の植物が被害を受けるのであって、ストレリチアにとってはたいしたことではありません。アフリカの雨の降り方は我が国とは違います。しとしと、と降り続く、なんてことはありません。土砂降りがやって来たかと思うと、さっと通り過ぎてしまいます。その後は直ぐに乾いてしまいますから、フザリュウム菌など増殖している暇はないのです。こんなことからストレリチアにとって大雨は歓迎こそすれ、困ったことではありません。

 それに引き換え、旱魃は大きな脅威です。大陸東部にある我が国などは穏やかな気候ですが、大陸での気候変化は極端に進行します。いざ、旱魃が始まると一年やそこらでは治まりません。何年も続くのです。これでは、災害に対しての防備を備えたストレリチアでも、安心できません。雨が一滴も降らない乾燥に耐えるには、もう花など咲かせるわけにはいかなくなるのです。余分な活動は一切やめて、気候が戻ってくるまでを耐え忍ばなければなりません。

 このことは私たちのストレリチア栽培に大きなヒントを与えてくれます。それはストレリチアが「旱魃が来た」と勘違いして花芽を作らなくなることを起こしてはなない、ということです。つまり、花芽形成期に極端に乾燥してはいけない、ということです。この季節は夏にあたります。幸い、日本では、この季節は雨が多いので自然が補いをつけてくれますので気がつかないですんでしまうのですが、鉢植えの場合や乾燥地では、そうはいきません。夏は十分な水やりが必要です。

 水やりは、必ずしも水分補給だけが目的ではありません。「旱魃が来た」とは誤解させない働きがあることを知っているのが「ストレリチア名人」の資格でもあるのです。