ストレリチア秘話No.252 ベテランは二重の感覚を持っている

 ストレリチア栽培で一番、気に掛けねばならないこと、それは寒さ対策です。ストレリチアを枯らす最大の原因は冬の低温で凍らせてしまうことですから。他の原因は特殊な場合であって一般には、そうそう起こりません。

 ストレリチアは熱帯植物ではありませんから、少々の寒さぐらいは平気です。生きるか、死ぬかの境目は0℃で、1℃までは死ぬことはありません。ですから、これを寒さ対策の最低限の基準とすればよいわけです。但し、これもストレリチアの生育段階や置かれた状況によって差が出てきます。若い苗は弱く、大株は強いのです。また、鉢植えは、成長点や根が外気の影響を受けやすく、地植えなら地面に保護されているので0℃を少々、下っても耐えられます。葉や茎は凍っても、成長点や根が無事なら、春から、また回復してきます。

 このようなことを知識として知っているだけでは一人前とはいえません。自分自身の感覚として捉えられなければ、すぐに行動することが出来ないからです。私たちは人としての感覚に従って行動しています。人としては、それでよいのですが、ストレリチアの面倒をみようとするなら、もう一つ、別にストレリチアなら、どう感じるのだろうか、という感覚を持つ必要に迫られます。つまり、人と植物の二重の感覚を持たねばならないということなのです。自分自身は暖房の効いた部屋にいても、今、ストレリチアが、どんな感覚ですごしているだろうか、と感じ取れれば熟練者、ベテランといえるでしょう。

 これとは反対のようなことですが、真夏のジリジリと照りつける太陽の下、人なら逃げ出したくなる環境。「ストレリチアがかわいそう」と思うのは、それは人間の感覚で、ストレリチアにとっては快適なのです。人としては実感は出来なくても、せめて、「そうなんだろうなあ」と思えればよいのです。ホースの水でシャワーを浴びせ、ホコリや虫を洗い流して、

「ああ、さっぱりした、いい気分だなあ」ぐらいなら誰でも味わうことができるでしょう。