ストレリチア秘話No.301 ストレリチアの育種「続」ストレリチアの相性とは

 この章はストレリチア栽培のトップレベルの話ですから、少々、難解かもしれません。

 ストレリチアの交配にあたっては、親株同士にそれぞれ、相性があり、結果はやってみなければ分からないと述べましたが、だからといって、むやみ、やたらに、あてずっぽうにやるわけではありません。すべて、運任せのクジ引きとは違うのです。このAの形質とこのBの形質を組み合わせたら、こういう結果が生まれるのではないか、の予測の上でやるのです。もし、その親株が今まで使ったことがあれば、その結果を参考にすることは当然です。だからといって、その思い込み通りに進むわけではありません。外れることの方が多いのです。人は自分に都合がいいように解釈する動物なのですから。

 次に、もうー歩、踏み込まなくはなりません。相性の良し、悪しとは、生れた子株全体の傾向を指しているのであって、苗の一本、一本は、それぞれ、少しずつ違った遺伝を背負っているわけですから。一概に決めつけるわけにはゆかないのです。雌しべは一本しかなくても、雄しべ(花粉)は無数にあり、それが皆、違った遺伝をもっているからです。ですから、例え、相性の悪い組み合わせであっても、一本や二本は、思わぬ程、優れた個体が出てくることさえあるのです。結果が出るまで分からない、とは、このことまで指しています。

 育種家の思う通りには、なかなか、なってくれなくて、歯がゆいことの連続なのですが、それでも、宝クジとは違って、結果を或る程度、コントロール出来るのが面白いところなのです。毎年、毎年、新しく誕生した苗の初花が咲いてきます。それを胸をときめかしながら待つのが育種家の冥利といえるでしょう。自分の思いが正しかったか、どうかが証明されるのですから。