ストレリチア秘話No.344 ストレリチア貯蔵根(根茎)あれこれ

 春はストレリチアの植え替えの季節です。先ず、鉢を横に倒してゴムのハンマーで軽く叩いて抜きます。普通の栽培であれば2年もすれば根(貯蔵根)が、とぐろを巻いて育っているのが現われます。そこで8号鉢なら下から3cm、9号鉢なら5cm程度(大体の目安です)を鋸で輪切りにして捨てます。ストレリチアの植え替えではハンマーと鋸は必番品です。鋸は「竹引き」が丈夫で理想ですが、無ければふつうの品で十分です。

 随分、荒っぽいやりかたと思われるでしょうが、こうでもしなければ次の鉢に収めることが出来ません。ストレリチアの貯蔵根は緊急時のための食料貯蔵庫なのですが、私に言わせれば、必要以上のやり過ぎ、作り過ぎに思えるのです。

 地植えの場合は根茎は、どこへでも伸びる事が出来て根毛から水や養分を吸い上げることが出来ますが、鉢植えでは限られた空間にしか伸びることが出来ず、じきに限界が来て、後は貯蔵根だけがえてしまうことになるのです。貯蔵するだけで、根毛を出して、根として働く余地がなくなってしまっているのです。

 植えてから3年以上もすると、根茎が廻り過ぎて株を押し上げて盛り上がり、水をかけても外へ流れ落ちてしまい、根に届きにくくなってしまいます。その上、花も少なく、小さく、葉も小さくなり、株が小さく縮んだ姿となります。水やりの量が少ないと、この活動は加速します。早魃が近づいたことを予感させ、前もって水を貯めておこうとする行動を起こさせるからです。

 これはストレリチアが生長から守備、保身のサバイバル状態に移ったことを表わしています。前進から一転して、生き長らえる方向へ転身したのです。これは鑑賞する側にとって好ましいことではありません。例えてみれば「老化,或いは退化現象」とも言えるからです。

 そこで植え替え時に、元を作り出した根茎をバッサリ切り捨ててしまうのです。

 これで、又、心機一転して、新たなスタートを始められるようになります。可愛そう、だとか、もったいない、などと思うのは見当違いだと言うべきでしょう。これは鉢植えに起きる現象で、地植えでは数十年もかかることでしょう。花立ちの悪い株ほど早く起き、切り捨てても、また、じきに元通りになってしまいます。手立てはありません。困りものです。

植替え