私の栽培場は、以前はガラスの温室でしたが台風の被害に逢い、現在は露地で、冬は霜除け程度、夏は直射日光にさらす自然栽培です。ガラスは紫外線を通しませんから、温室内のストレリチアは伸び伸びと育っていましたが、現在の直射日光の下では、もっと短く、締まった姿となっています。この違いの元は紫外線です。
紫外線は生物の細胞組織を破壊する有害な光線とされています。この被害を防ぐためにストレリチアも様々な対策を講じています。先ず、細胞同士の間隔を蜜にして光線の侵入を阻止します。これが結果として低く、締まった草型になっているわけです。次に花の赤や青紫は紫外線の侵入を防ぎます。葉や葉柄の灰色がかった緑も同じ効果を持つものと思われます。
これとは別に紫外線が遮断された環境に置かれたストレリチアは、身を守る必要がないのでヒョロリと伸びて、みずみずしい緑色となり、花のも薄くなってしまいます。これでは本来のストレリチアの姿とはいえないでしょう。
「ストレリチアは直射日光に当てて下さい。引き締まった姿、美しい花のために」とはいいうものの、実は、ストレリチアが本来は望んでいない紫外線から身を守るために折り合いをつけていたのです。このバランスの上に生きている以上、やはり、直射日光に当てなければならないのです。(人類の皮膚が太陽光線に当たるとメラニン色素が出来るのと同じです)
なお、このことは光合成とは関わりがないようです。太陽光の中の、もっと長い波長の光線で用が足りるらしいのです。
好きでは無い紫外線と折り合いを付けているうちに、それがなくては困るようになってしまった。どうも生物の生き方は一筋縄ではないようですね。