ストレリチア秘話No.421 ストレリチア 花の観賞の奥深さ

 ストレリチアは花芽が顔を出してから開花に至るまで長い期間がかかります。暑い季節は一ヵ月少々と早いのですが、寒さに向かう季節になると何ヶ月もかかってしまうので、その間、否応なく付き合わされてしまいます。始めの内は、焦れったく思うのですが、やがて、少しずつ変化が現われてきます。

 花芽の出始めから半分ぐらいの長さに伸びるまでは、ただの緑値で何の変哲もありませんが、その後、先端が紅色に他づいてきます。ただし、これは優秀花の場合だけであって

 *星以下の花では、こんなことは起きません。私が優秀花にこだわるのは、「センダンは双葉より芳し」で、早くから美しさの片鱗を見せ始めてくれるからなのです。日が進むにつれ、紅色が鮮やかになってくるのを楽しんでいたのに、不思議なことに開花が近づくにつれ、美しさが停まり、時には低下したのではないかと思われるほどの状況が起きてきます。これは学術的に見れば、密集していた細胞が大きな組織に育っために分散されたのではないかと思われます。期待以上の美しさになるであろうと思っていたのに、ほどほどの美しさで開花に至ります。

 でも、これで終わりではないのです。花首の紅色は完成が遅れます。開花し立ての頃はまだ不十分で、完全開花となって初めて本来の美しさを表わしてくれるのです。花芽の伸び始め以来の長い時間は、焦れったく思うのではなく、その変化を楽しむ期間と考えれば、ストレリチアとは、なんと長く楽しませてくれる花だろうと思わずにいられません。

 その後、次の花が出てきます。その間隔は気温によって差がありますが、だいたい一週間前後とみてよいでしょう。切り花として活けた場合は、古くなった花はしおれて見苦しくなるので、後ろへ倒すようにして引っ張って取去るようにしています。いつも新しく、新鮮な花を眺めていたいからなのです。