ストレリチア秘話No.502 ストレリチアからの贈り物 ストレリチアへの望み

 私のストレリチア圃場には、数多くの名品が並んでいて、それらに囲まれていると、実に豊かな気分に浸れます。でも、初めの頃は雑多な集団でした。それが長い間の選抜、陶法によって、やっと精鋭の集まりになれたのです。でも、それは古くからのレギーネのことで、新顔のジャンセアゴールドの一角は、まだ、雑多な集団です。まだ、生まれたばかりですから、少々の不足な点があっても立派に通用するからです。ここでは希少の価値が優先しています。

 名品達は、それぞれ、個性的な形質や美しさを主張しています。それが私に、「慰め」や「励まし」そして、「癒やし」まで与えてくれるのです。これは、もう、「もの」としての植物の存在を越えての働きといえましょう。

 それでも、毎日、眺めていると、つい、欲が出てきます。この世には完全無欠のものはありませんから、しかたないことです。

「この赤い色が、もっと鮮やかであればなあ」

「もっと花茎が長ければ見やすいのになあ」

「花首が短すぎる。もっと伸びてくれればいいのに」はたまた、「今まで見たこともなような、すばらしい花がでてくれたらなあ・・」などと、注文をつけたくなってくるのです。

 このような欲望には新品種の作出しか道はありません。結果として交配、育種に励むことになってしまいます。ところが、いざ、取りかかってみると、これは大変な事業です。結果を見るまでに5年どころか10年もかかることは珍しくなく、ようやく、開花に至っても、期待とは程遠いことが多いのです。それでも、時には成功もありますから、やめられません。

 とはいっても、すべて完全を目指しているわけではありません。独特の個性も望んでいるのです。初めの頃は多少の欠点を合わせ持つでしょうが、そんなことは、後から解消していけばよいのですから。

 このような経過をたどって、僅かな数の名品が生まれてきて、やがて、嫁入りしてゆきます。でも、この後の道も平坦ではありません。折角、持って生まれた才能も、生かしてくれる人あってのものだからです。生みの親の願いは、これらのストレリチアが、「落ち着くべき所へ落ち着く」ことにあります。