ストレリチア秘話No.592 ストレリチア栽培 最大の力仕事は地堀り『地植えの掘り上げ』

 ストレリチアの栽培は、鉢植えでは殆どが手先の作業ですから、力仕事といえるようなことはありませんが、地植えに関わる人だけは避けて通れません。ストレリチアは地植えにすれば、水やりの必要がありませんから楽なものですが、それでも、10年から20年もすれば大株となって掘り上げ、株分け、移植の作業が待っています。この間隔は、植えた品種の特性によって、また、周囲の状況によって違いがあります。

 これが大仕事なのです。肉体労働の力仕事で、かかる時間も半日から一日もみなければなりません。まず、掘り上げる株の周囲の整理から始まります。掘った土の置き場を確保しておかなければならないのです。

 そこで、いよいよ、スコップで掘り上げに掛かるのですが、株から約 10センチ離してぐるりと周囲を掘ってゆきます。浅く掘って済む、などと甘い考えは通じません。ストレリチアは見た目よりは深く潜っていますから、想像したよりは深く掘らなければならないのです。

 どの程度の深さにするかは、その土地の状況によっても違います。伊豆半島のように硬い岩盤の上に土が30cm程度、積もった地域では、根は浅く、横に広がっていますから、楽ですが、水はけのよい砂質土では50cmも掘らないと十分な根が確保出来ません。

最期に株の真下にスコップを入れて倒します。そのままでは、大きすぎ、重すぎて動かせませんから、その場で株分けしてから運び出します。この際、残す根の長さは、20cmもあればで十分です。長く残しても、いいことはありません。根は切るのではありません。叩ききるのです。こんな荒っぽいやり方でなければ先へ進めないからです最初の株分けには鋤(すき)があれば便利です。スコップは刃が湾曲しているので不正確なのです。小分けには出刃包丁か鉈を使います。とにかく、作業は荒っぽくて、少々の傷など気にして一日当たりられません。大技の連続なのです。ストレリチアの専門家には、大技、小技、共に使えることが求められます。

 この後、移植するわけですが、守るべき条件は植える深さです。見分けるのは簡単です。

 地上部と地下部は、はっきりと色の違いがありますから、それを守ればよいのです。

 近頃は重機のユンボを使うのを目にします。大量の場合には便利ですが、手荒な扱いの為、株を痛めることを覚悟しなくてはなりません。

 植え付け後の回復は1年では不十分で、完璧を期すには2年かかります。