ストレリチア秘話No.49 ストレリチアの本質に迫りたい ー研究者の願いー その1 

「失敗はストレリチアの生理の限界を教えてくれる」

 私の所には数多くの失敗例が持ち込まれます。勿論、自分の失敗だって含まれます。1鉢のストレリチアを枯らしてしまった、小さな例から、大量栽培の株が被害を受けた沖縄の例に至るまで、数限りなく起きてきます。

 研究者の責務として、それに対しての処方を答えるのですが、必ずしも成功するわけではありません。理論としては間違っていなくても、それを実行するのは簡単ではないことも多いのです。例えば沖縄の例です。夏から秋の台風シーズンには大量の雨が降ります。後で説明がでてきますが、ストレリチアにとっては困ったことなんです。雨が降り続きますと、「高温、多湿」の好条件となって病原の細菌が大発生してきます。ストレリチアは乾燥地帯の出身ですから、この事態に対処する対策を身につけていません。堅い表皮で守ってはいるのですが、細菌が大量に発生した場合は、ただ一つ、穴が開いている気孔から細菌が侵入してしまうらしいのです。細菌に侵入されたら最後、手当の方法はありません。一巻の終わりです。細菌に対しては殺菌剤は利かず、また、病気の進行は速く、手当は間に合いません。対策は、たった一つ、湿り気の連続を絶って、細菌の増殖を抑えること、簡単に言えば、水はけをよくすることだけなのです。

 とはいえ、これをやることはたいへんなんです。まず、今までの作物の栽培の常識に反するのです。普通は降った雨の水を逃さないように畝で止めて貯めるような構造にしています。それを、さっさと流しなさい、と。これは気分上、大きな抵抗です。また、畝を上げて植えれば、水はけは完璧になりますが、植え替えの労力がたいへんです。それやこれやで、簡単にはことが済まないのが実情です。