ストレリチア秘話No.58 ストレリチアの本質に迫りたい ―研究者の願いー その10

シェークスピア?

 私は、先行きが明るく見えてきた安心感から、いたずら心を起こして円形劇場のステージに上がり、高校生の時、他の科目など目もくれず、、訳も分からずに夢中で勉強したシェークスピアのハムレットの一節を手をふりながら、叫んだのです。

「ツー ビー、オア ノット ツー ビー ザッツ イズ ザ クエスチョン」

と。シェルトン氏が驚いたような顔をしたのが見えました。会話もおぼつかない日本人が、何と、シェークスピアを語り始めたからでしょう。これは後で知ったことですが、イギリス人やイギリス系に人たちは、シェークスピア劇が好きで、よく見ますが、語ることが出来るのは高度な教養人、とされているのだそうです。でも、私はシェークスピアにくわしいわけではありません。英語の教科書で勉強しただけのお粗末なものでした。

 この後、シェルトン氏は全面的に私を支援してくれるのですが、スカルピ教授の紹介だけでなく、あのシェークスピアの一節も大きかったのではないか、と思っています。人生、何が役に立つかわかりません。これからの自生地巡りについては、他の章に譲りますが、ストレリチアの自生に出会えたのは私を支えてくれた多くの人のおかげなのです。何しろ、日本の5倍の面積で、地図の上では、針で突いたぐらいの狭い土地にしか生えていない植物なのですから。