ストレリチア秘話No.93 個体は種の進化の過程を繰り返す

 随分、難しい表現をしましたが、実体は、そうでもありません。ストレリチアの苗は、本葉が出て2,3枚の間は、ジャンセアも、レギーネも区別はつきません。全部、レギーネにみえるのです。それが生長するにつれて、ジャンセア、パービフォリアは、段々と葉が小さくなっていきます。南アフリカの記録では、12枚目で成熟した葉の形になる、とありますが、私の観察では、本来の姿に安定するのは、もう少し先のように思えます。

 このことは、ジャンセアを養成するようになって、初めて気がついたことで、レギーネだけの頃は、思いもよらないことでした。いまでは、ジャンセア無葉種の選別には欠かせないことなので、1年を通じての作業となっています。

 生物が幼いときから進化の歴史をなぞることは、生物学では昭和10年代から知られていました。私たち旧制中学の生徒は先輩から、このことを聞かされたものです。「個体は種の発生を繰り返す」と。先輩とて、生物学には関係はありませんから、どこまで深く理解していたかは分かりません。ただ、自分が知り得た当時の最新の知識を、後輩たちにも教えずにはいられなかった、ということでしょう。こんなことを言うのは、これは私だけのことではなく、全国的な風潮でもあったからです。

ストレリチアでは、本葉の時からの観察ですが、目に見える以前の段階では、もっと古い進化の時代を再現していることでしょう。

 生物とは、一生の中に、発生の時からの進化の過程を再現していたとは!驚くばかりです。

これも、ジャンセアを扱うようになって知ったことです。