私の園芸上の師匠は何人もいますが、アメリカの園芸家 バーバンクも、その一人です。但し、交流があったわけではありません。なにしろ、19世紀後半から、20世紀初めに活躍した人ですから。カリフォルニアの園芸事情を3回にわたって視察にいきましたが、その発展の背後にバーバンクの手法を受け継いでいたことを知ったのは、ずっと後のことでした。
バーバンクは生涯の間,1000種もの新品種を発表していますが、その中の相当数が、今までの水準を遙かに超えたもの、または常識を超えて、とても信じられない性能を持つもので、現在でも野菜や果樹に活躍しているものもあります。世間の人々は彼を『魔術師』と呼んだり、或いは「あれは自分で作り出したものではない。こっそり、外国から仕入れたのだ」
と、ペテン師扱いまでしました。
バーバンクは交配親に優れた親株を選んだことはまちがいありませんが、もう一つ、彼らしい手法があったのです。これは一般の人たちには重要視されなかったこですが、数学の確率を応用したことなのです。かれは種子、苗を数十万本、ときには百万本も養成して、その中から優れたものを選び出していたのです。これは当時の常識を遙かに超えた手法でした。野球に例えると、草野球のヒーローとメジャヤー リーグのヒーローの差のようなものです。裾野が広ければ、優れた選手を選び出すことが出来きます。そして、時には、今までの常識を越えるものまで現れることさえもあるのです