ストレリチア秘話No.229 敵の侵入口が開いていたストレリチア城

 ストレリチアにとって一番恐ろしい敵は、「あっ」という間に腐らせてしまう「立ち枯れ病」とも、「腐敗病」とも呼ばれる病気を引き起こすフザリュウム菌です。ストレリチアの体は丈夫なクチン質に覆われていますから、カビの仲間の真菌類のように外側を犯す病気には抵抗力がありますが、いきなり、体内に侵入してきて、「あっ」という間に増殖して悪さをする細菌には、それを防ぐ手立てを持っていません。ストレリチアの自生地、アフリカの乾燥地では、フザリュウム菌が増殖することなど滅多にありませんから、進化の過程で防備の手段を身につける必要がなかったからでしょう。湿潤な地域を故郷とする植物は平気なのですが乾燥地出身は守る手立てを持っていないのです。

 長い間、この菌が、どんなルートで体内に侵入するのか分からなかったのですが、近年の研究で「気孔から侵入する」との説が登場してきました。これには、まさに「目から鱗が落ちる」思いがしています。多くの植物は葉の裏に呼吸のための気孔があります。ストレリチアだって同様です。レギーネは大きな葉を持っていますから、被害を受けやすく、ジャンセアは葉がありませんから受けにくい、ということになるでしょうか。葉柄も緑色で光合成をしていますから、やはり、気孔はあるはずですが、こちらは雨、風に強くさらされるので、無防備であるとは考えられません。

 とにかく、味方に必要な資材を運び入れるために開口しているところへ敵が侵入してしまうのです。そうそう手立てが在りません。軟腐病は困ります。気がついた頃は、もう末期で手遅れです。予防薬を散布しても、あまり効き目がありません。農薬が雨で流されてしまった頃、菌が活躍してくるのですから。いまのところ、やれることは、菌が活躍できないように、雨の後、湿り気を長続きさせないようにすることぐらいでしょう。でも、私の所のように砂丘上で水はけのよい土地では全然、関係の無いことがらです。