ストレリチア秘話No.302 ストレリチア属、種(しゅ)の違いは大きい

 私は、初めの頃、ニコライやコウダータなどのストレリチア大型種を手がけたこともありました。アルバは日本に入っていません。2001年、最後の訪問時に苗の購入を考えましたが、あまりにも大きく、送料がかさむのであきらめました。そこまでする利用価値はないと判断したのです。この点、私はコレクター(収集者)の資格に欠けています。何しろ、実用第一なのですから。その後、大型種を扱うのを止めました。私たちの栽培環境では手に余るからです。例えは良くないのですが、「乞食が馬をもらったようなもの」で、面倒がみきれません。

それなのに、私の所へ訪れるお客さんからニコライの栽培相談を訊かされることがしばしばあります。苗のうちはレギーネと大して変わらず、また、楽に手に入るので、面白がって、つい、買ってしまうらしいのです。私の答えは「乞食が・・・」です。例えてみれば、ライオンや虎の子を育てるのと同じです。小さくて可愛い、可愛いと思っても、見る見るうちに大きくなって手に負えなくなり、最後は動物園に引取ってもらう羽目になってしまいます。ストレリチアは監獣のようを危険はありませんが、大き過ぎてどうしようもなくなることでは同じです、日本の住宅事情では、ビルのエントランス以外は無理ですが、それさえも日照不足には耐えられません。時には日に当てたくても大きすぎて簡単では無いのです。そこにはコストパフォーマンスの原理が働いてきます、「そこまでやるほどの価値があるのか?」と。私が思うには観葉植物としてなら兎も角、ストレリチアとして花を見るにはコスパが許さないと見ています、庭の地植えなら、大きさはクリアー出来ますが、実は、大型種はレギーネより寒さに弱いですから、可能なのは南西諸島ぐらいしかありません。私は20年前、自分の母校、富浦小学校の庭にニコライを植えたことがありました。子供の頃、バショウが植えられていたことを思い出したからです。でも、やっぱり駄目でした。ここは海沿いで緩かく、直ぐ近くは、寒さに弱いハマボウ(奄美大島に多く自生する)さえ生きられた土地だったのに。やはり、無理でした。

 レギーネとジャンセア。これは大型種とは別の意味で違いがあります。私は、ここ数年来、ジャンセアの育成に力を注いでいるために、レギーネの方が、やや手薄になっています。面倒はみています。ただ、関心の持ち方が、です。ジャンセアに駅染んだ目で、改めてレギーネに対すると、

「え~っ、レギーネって、こんなに柔らかく、敏感で、育ちも早く、花立ちもよかったんだ!」と驚くのです。今までストレリチアの欠点とされていた点がジャンセアによって薄められて感じてしまうのです。つまり、特殊な植物では無く、一般の植物に近く感じられるようになった、ということなのですが、これは、あくまでもジャンセアと比べてのことなのです。

 やはり、ストレリチアも種の違いは厳然としてあるようです。