ストレリチア秘話No.448 ジャンセアの不思議な振る舞い

 私はジャンセアが好きです。葉のない、尖った柄の集団がスッキリした姿に見えるからです。乾燥にも、風などの障害にも、植え替えのショックにも耐えてくれるから、尚更です。

 それだからこそ、後から起きた意外な現象にとまどっています。なぜ、こんなことになるのだろうか、不思議なのです。それはジャンセア オレンジ種1000本の実生を養成したときから始まりました。父、母株、共に完全に無葉の株を使用したのに、子供達の3~4割に小さな葉がついた苗が出て、これは一体、どういうことだろうと思い始めたのです。これが数%ぐらいの低い出現率でしたら、交配、遺伝の出来事では不思議はありませんが、これは、そういう解釈では済まされない高率なのです。これには何か訳があるのではないかと思い始めました。

 その後、黄色種ジャンセアゴールドの交配、育苗を手がけても、同じ事が起きるのを確認しました。こちらは4割から5割、小葉、中葉が出てきました。出現率が、やや高いのは、元になった先祖の「パーヴィフォリアセットラーズパーク」が小葉だったためですから仕方ありませんが傾向としては同じなのです。

 ひるがえって、ジャンセアの自生地、「ユイテンハーグ」と「ブラック ヒルズ」の2カ所を思い出してみました。私の記憶では、この2カ所共、ジャンセア 無葉種ばかりで、小さな葉のパーヴィフォリアを見たことはありません。自然界だって種子からの実生で殖えてきたのですから、私の所と同じで小葉も生まれたはずです。それなのにそれらは生きていないのです。じつは自然界ではパーヴィフォリアは非常に少なく、たった一カ所、バテンシーにしか存在していません。

 小葉のジャンセア、中葉のパーヴィフォリアは、ジャンセア自生地では生きられず、人工栽培でだけ、とは、いったい、どんな理由があるのでしょうか?以下は、私の未熟な即断ですから、正確の保証は出来ません。

 「ストレリチア ジャンセアは、環境に適応するために、とうとう、無葉にまで進化してしまいましたが、出来れば、もう少し楽に生きたい、小さい葉があった方が光合成がふえるのに」との思いが捨てられず、小葉、中葉の子供達を或る程度、生み出すのだが、「自生地では雨が少なく、環境が厳しいので、やはり、それらは生きていけない。だから、無葉種だけが生き残ったのだ」と。