ストレリチア秘話No.464 ストレリチア 原生(原種)と人工(園芸種、改良種)

 また、前章の続きです。出来の悪い人工種よりは原種の方がまだ、ましだ、と述べましたが、やはり、説明が必要のようです。実は、これ、底辺レベルの話であって、理想的なストレリチアを求める人に向けたことではありません。

 原生のストレリチアは、人間に奉仕するのでなく、自分の為に生きています。長い年月にわたって同じ場所で生きてゆくのですから、一時に多くの花を咲かせ、大量の子孫を殖やす必要はなく、のんびり構えています。仮に、そんなことをしたら、消耗が欲しく、生きていられません。結果として、原種は花立ちがほどほどなのです。でも、それでは、私にとっては不満です。私は、何百年もストレリチアを相手に生きていることは出来ません。

 短い間に数多くの花を見せてもらいたいのです。そのために、必要だったら、水も肥料も、いくらでも提供しましょう。そんなことはお安いご用です。といったところで、ストレリチアは、聞いてはくれません。身についた形質は変えられないのです。もう、固定してしまっています。どんなに手を施しても駄目なものは駄目です。この点を誤解している人が大勢いるのは残念ですが、しかたありません。人間相手なら説得も出来ましょうが、相手が植物では手の施しようがないのです。

 そこで品種改良の手段に訴えることになります。ストレリチアの花芽形成は、外部の環境刺激の影響は殆ど受けず、植物体内の事情よりもDNA 指令が優占するらしいので、この遺伝形質の目指せば目的達成が可能になるのです。結果は、そう難しいことではありませんでした。花立ちの良い株は、すでにありますから、その優良な遺伝子を受け継がせればよいわけです。それでも、問題は、まだまだ、ありました。花立ちだけの単一の条件だけでなく、花の美しさを始め、いくつもの条件が必要とされますが、これが多くなるほど、出現の可能性が低くなってしまうのです。確率の問題が出てくるので簡単ではありません。

 私たちを喜ばせてくれる優秀品種は、生まれ出てくれはするものの、数が少ないのは、このような事情によるものです。それにしても、これで、ようやく望みは達せられました。

 優秀品種を集めておけば、毎年、期待通りの花が眺められるようになったのです。それでも気を付けなければならないことも起きてきます。優れた性能を発揮するには、それだけの消耗もしますから、栽培も高度化が必要になります。これからのストレリチア栽培は、放任でもよいのと、気を配らなければの系統に二極化してゆくことでしょう最後に一つ書き加えます。原種について述べましたが、あれが、すべてを表わしたわけではありません。原種にだって、個体、それぞれに個性があるのです。私の評価が高い3種、「ゴールド A」「マンデラスゴールド」「ジャンセアユイテンハーグ」は、花立ちの点でも交配種に負けないのです。最高クラスには入れませんが「優良」は保証付きなのです。原生で生きられる限界、すれすれまでの花立ちを見せてくれます。