ストレリチア秘話No.524 ストレリチアの本性を探るその2「新、旧 両用の二刀流」

 ストレリチアは見た目と本性が少々、違うように思えます。一見した限りでは、カチカチの硬い体で温帯の柔らかい風土には異国情緒を感じさせ、性質も、鈍感、鈍重で頑固です。

 でも、それでいながら、故郷を離れて異国へ来ても、立派に適応し、なじんでくれます。姿、形は何ら変えることなく、です。

 それでいて、私のような育種家のいうことまで聞いてくれ、範囲は広いとはいえませんが遺伝の成り立ちの一部まで変更してくれるのです。こんなフレキシブル、柔軟な性質を持つ植物は、そう、多くありません。特に、乾燥地帯のように特殊な気候風土の出身なら、尚更のことです。人類は、先祖がアフリカを出て世界中に広まりましたが、それを可能にしたのが、新しい環境への適応能力でした。21世紀の現代になっても私たちの体には、数百万年前から草原で生きてきた体質が残っているといわれます。それを満足させてやらないと幸せな気分にはなれないらしいのです。どうやらストレリチアも似たもの同士だったようですから、ストレリチア栽培とは、持って生まれれた性能を最大限に発揮させることにある、といってもよいでしょう。

 私は今でも時々、珍しい植物の育成に挑戦していますが、失敗することが多いのです。そこで思い知らされます。大航海時代から人類は、世界中から植物を集めてきて栽培実験を繰り返してきましたので、今、私たちの周囲にあるのは、その試験の合格者たちなのです。私が初めての挑戦者であると思ったのは錯覚で、すでに採集、実験が行われ、その結果が不成功だったために広まらなかったにすぎません。しかも、この実験の最終の比較相手がストレリチアとあっては、とても敵うわけがないのです。これからも、珍しい植物が見つかったとしても、それは以前にテストされ、不合格とされて隠れた存在になっていたものと見て大きな間違いはありません。

マルーラ